広島高等裁判所松江支部 昭和28年(ネ)92号 判決 1954年12月24日
控訴人(被告) 三井木船建造株式会社
被控訴人(原告) 亀尾定一 外一名
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
この判決は仮にこれを執行することができる。
事実
控訴代理人は「原判決中控訴人敗訴の部分を取消す。被控訴人等の請求を棄却する。控訴費用は第一、第二審共被控訴人等の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は、主文第一、二項同旨の判決及び仮執行の宣言を求めた。
当事者双方事実上の陳述は、原判決摘示のとおりであるから、すべて茲に引用する。
証拠関係<省略>
理由
当裁判所は、被控訴人等の本訴請求中、被控訴人亀尾の昭和二四年一一月分賃金八三七五円及び勤続期間六年二ケ月に対する従業員退職規定による退職金六万九七八九円、被控訴人佐野の昭和二四年一一月分賃金八一〇〇円及び勤続期間六年五ケ月に対する従業員退職規定による退職金七万一五四八円の支払を求める限度において正当であり、爾余の部分は失当であると判断するが、その理由は、次に附加するところの外原判決において説示したところと毫も異らないから、茲にこれを引用する。成立につき争がない乙第三号証、同第四号証の一部及び当審証人出口義一の証言により、昭和二四年三月頃以降控訴会社の経営合理化のため、経営上の重要なる権限の一部が各造船所長に委譲されたことが窺われるけれども、固よりこれを根拠として、昭和二三年八月控訴会社代表者とその各造船所従業員労働組合を以て組織する労働組合連合会代表者との間に締結された従業員退職規定の効力を否定することはできない。その他、控訴人が提出、援用するすべての証拠によつても、当裁判所の叙上の如き判断を窺すに足らないから、控訴会社は被控訴人等に対し、前記賃金及び退職金並びにこれに対する訴状送達の翌日以降完済に至るまでの法定損害金を支払うべき義務を負担するものというべく、これと同趣旨に出で、被控訴人等の本訴請求中右限度においてこれを認容した原判決はまことに相当であるものといわなければならない。よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を各適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 平井林 藤間忠顕 組原政男)